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初めて触れたのは母の胸でした。その赤子は乳を吸い成長し、やがて社会の渦に身を投じました。理想とは程遠い現実や、他者との軋轢の中で生じたストレスに耐えきれなくなり、幼き日に受けた母性に救いを求めたのでしょう、女性の胸に異常なまでの執着を見せるようになったのです。私は普段、多様性を受け入れ視野を広く持とうと努めてはいますが、こと女性の胸に関してはカルト集団顔負けの原理主義者であるといわざるを得ません。
女性の胸にこそ、この世の真理があるのではないか。そこには宇宙の原理・原則が内在している気がしてならないのです。確かに女性は、明日で世界が終わりだと言われても、偽薬の筆頭である化粧水や乳液による肌の手入れをやめないでしょうし、国際情勢や政治よりも自分が小顔の部類に入るのかどうかを重要視する生き物ですが、その胸というものは芸術や方程式といった類をはるかに超越しています。私は女性の胸に触れる度に、「人間原理万歳！」と衷心からの祝杯をあげ、畏怖の念を抱きながらも惜しみない称賛の拍手を彼女たちの胸元へ送ることになるのです。
人は胸から教わることがとても多いのです。学のないあなたでもノーブラの女性を見ると、自由と退廃は隣り合わせなのだ、と鼻血を出す前に哲学的な感傷に浸るくらいの感受性を持ち合わせてはいませんか？枯死の予感が花をより一層美しく見せるように、胸もいつかはたれる儚いものであるからこそ、私達はそこに美と神秘を見て取れるのです。性質が似通っていますから、女性を花に例えることわざが多いのもうなずける話です。
皮肉ではなく、編集作業はとても有意義で素晴らしい体験でした。この黄色人種が好むところの単純作業を黙々とこなせるところが私の長所なのです。しかし日本に生き日本語を話すにもかかわらず、その奥深さを何一つ理解していなかったことは慚愧に堪えません。今日の英語の台頭にあるように、国際化が進みボーダレスな世界に向かっている今だからこそ、自国の文化や歴史に改めて目を向けつつ、老人達による鎖国祖法観を断ち切ることが、真のグローバリゼーションへの第一歩なのではないでしょうか。ただし、田舎に住んでいる私には関係のない話ですが。
私はかつて運営にペナルティを食らい改名を迫られました。「ぱふぱふ」は良くて、何故「おっぱぶ」はアウトなのか。この一年近くにわたる本書の編集作業は、その答えを探す思案の旅であり、また自由を勝ち取る為の闘争でもあったのです。それほど私は倫理やモラルの欠如した人間だったのでしょうか？「子供もプレイしているんだ」と言われれば返す言葉がありませんが、しかし人の自己表現とは力で弾圧するものではなく、あまねく尊重されるべきものです。仕事そっちのけで窮屈な社会に声を上げることが大好きなあなた達クリエイターが、私を窮屈にして罪悪感を感じないのが不思議でなりません。貴社も矜恃から、社を挙げて共謀罪法案には反対の姿勢をとっておられるはずです。おられないのならそれは自虐でしょう。
ところで本書には一部、胸の小さい女性を貶める表現があることをお詫びいたします。微乳のあなたはこうお考えかもしれません。「結局男は大きい胸が好きなんでしょ？だから胸のない私には、白馬の（現代でいう白い高級外車ですか）王子様が現れないんだわ」と。いいえ案ずることはありません。お忘れですか、我が国がアニメや漫画を通じて幼女趣味を推進していることを。あなたの胸も守備範囲だという男性は必ずいます。貧乳も自分の数少ない大切な個性の一つだと割り切り、文字通り無い胸を張って堂々としていればいいのです。そもそも巨乳好きには頭の弱い男しかいませんし、そのほとんどがゆとり教育を憎む団塊ジュニア世代です。
しかしぺちゃぱいがあなたの絶対のコンプレックスであり、ぜひとも解消して来たる婚活パーティーへの自信をつけたいのならば、私は美容外科の受診も否定はしません。この世の終わりみたいな顔をするくらいなら、行動を起こすべきです。ただし病院は、金額ではなく信用で選ぶことです。豊胸手術は健康保険が適用されず全額自己負担だからといって、あなたの財布事情を病院選びの判断材料にするべきではありません。
最後になりますが、男性諸兄には胸の如何を問わず女性へ敬意をもって接することを、女性諸姉にはいつの時代もフェミニズムの象徴であり続けることを望む次第であります。まだ見ぬ胸に思いを馳せつつ、そして巨乳女性に関する３つの恥知らずな俗説の根絶を切に願いながら、律儀にここまで読んでくださったあなたの目がブルーライトの危機にさらされる前に、擱筆させていただきます。
平成29年10月29日
―参考文献―
「故事ことわざ辞典 特装版」(三省堂編修所)
「weblio」(https://www.weblio.jp/)
「故事ことわざ辞典」(http://kotowaza-allguide.com/)
「団地妻A子の勝負下着論」(美乳堂)
